スタニスワフ・レムが死んだ

ポーランドの、いや世界的なSFの巨匠スタニスワフ・レムが死んだらしい。代表作の「惑星ソラリス」はタルコフスキーともう一人で二本の映画になっているが、レムは両方ともわかっていないと評価していない。私はタルコフスキーの方は見たが全く面白くなく、二回見たが二度とも寝てしまった。私も全く評価できない。多くの人の殆どが「惑星ソラリス」をシリアスな小説と見ていること自体が全くの誤解で、あれは宇宙的壮大ハナモゲラなのだと思う。レムの一つのテーマはコミュニケート不能の存在とコミュニケートしようとする空しさの奇怪な滑稽譚であり、シリアスでも何でもない。私の一番好きなレムの作品は「浴槽から出た手記」で、これは、カフカの「城」の様なところへ放り込まれた主人公のたどる理不尽極まりない意味不明の不条理を悪辣極まりないハナモゲラで描ききっている。主人公は最初スパイ容疑をかけられるが、その内二重スパイ、三重スパイと疑われ、最後には七重スパイと言われる。まあ、思い切ったカフカのパロディの様にも思えるが、だいたいカフカ自身はコミック小説をめざし、友人達は彼の短編を読んで笑い転げていたというのに、日本人は不条理小説などと哲学風に持ち上げるからかなわんな。あの鈍くさくて自己中の悪人、ベートーベンを楽聖と持ち上げるのと似てはいるわな。「惑星ソラリス」は「浴槽から出た手記」の正反対にシリアスを装っているが絶対に違うと思う。なぜなら作中に出てくる延々と長い「ソラリス学」なる無意味な論文は絶対にハナモゲラだと思う。レムが死ぬなんて彼も人間だったんだなあ。