久しぶりの洗足

久しぶりの講義に洗足へ出かけた。約3カ月ぶりなので、前に何をしゃべったのか覚えていない。で、漫談風に近況報告。都電コンサートの話からついつい鉄道談義。その流れで安部幸明のシンフォニエッタ3楽章のSLモチーフを聴く。12回目。学生には大受けだった。SL関係ではオネゲルパシフィック231が有名だが学生は知らない。そういえば最近FMでも聴かないなあ。東響の団員だった時に弾いたがとても難しくていやな曲だった。
安部さんに関連して田中正平の純正調オルガンの話をしつつ気がついたが、田中正平氏は日本に帰ってから音楽界には受け入れられず、鉄道会社の技師となっている。その田中氏に安部さんが会いに行き、純正律を教わっている。そしてなぜかSLモチーフに取りつかれている。その安部さんから私は純正律の後継者とされており、この私は人後に落ちぬテッチャンで、数少ないピアノ曲のひとつ、練習用組曲「山手線」はそこそこ人気があり、いろんなところで演奏されている。そうすると純正律と鉄道つながりで私は田中正平氏の孫弟子ということになるんだなあ。感慨ひとしお。
帰りにN響のヴァイオリニストだった田渕さんに会う。彼とは学生時代、1年近く西荻窪で同じ下宿住まいだった。とにかくよくさらう人で一日5~6時間さらっていたんじゃないだろうか。一方の私は全くさらったことがなく、彼も玉木さんのヴァイオリンを聴いたことがないと言っていた。そんな彼に大変助けられたことがある。それはお互い社会人になって大分たち、彼もN響の中堅で活躍していたころの話。私は渋谷の「ノンベイ横丁」で一人飲んでいたらN響木管の三人が入ってきた。仲よくはないが知らないこともないので、いろんな話が弾んだ。そのうち玉木は何時間さらったんだ?という話になり私の一番嫌いな話題なのでそっけなくさらったことなんかない、というと彼らは「うそつけ」ということがきっかけで、さらうだろ、さらわないで喧嘩になり段々エスカレートして、表へ出るかみたいな状況になり、三人相手じゃ参ったなあ、何とかならんかなあと困っていたとき現われたのが田渕さん。わたしゃ救世主とばかり、同じ下宿だったんだからオレが全くさらわなかったことを証明してくれというと、彼はにこにこして「僕は一度も玉木君のヴァイオリンを聴いたことがありません」と明言してくれた。それでも三人はまだ納得しないようだったが、険悪な雰囲気はなくなった。田渕さん、あのときは大変お世話になりました。