たかしまさんの移動ド

4時に荻窪で青木さんと落ち合い、たかしまさんが車で迎えにきてくれた。彼と私は直純さんの兄弟弟子でその後彼はドリフターズの「全員集合」の音楽担当で脚光を浴びるようになった。彼と直接会うのは10年振りくらいで、彼の自宅を訪れるのは30年振りくらいだ。昔、彼と話をしたとき彼が移動ドだといったことが記憶にあり、今現在ストリング誌で話題になっている移動ド固定ドの話の参考になるかと思って彼に電話したのが2週間前。その電話がとても刺激的で青木さんに話したところ直接インタビューということになったのだ。
彼の子息、カンタさんがアシスタントを務めており、カンタさんは絶対音感所持の固定ド、父の方は移動ドの鬼で、親子が正反対の立場というのも面白い。カンタさんも交え4人での座談が始まった。2時間半,とても充実した刺激的な内容だった。詳しい内容は来月のストリング誌に任せるとしてここでは2.3報告しておく。私は自分が固定ド教育で育っているのでいまさら移動ドにはなれないが、固定ド絶対主義者が移動ドを馬鹿にするのには絶対反対である。固定ドはアナリーゼに不向きであり、どういう和音変化でいま何調なのかということを無視する傾向がある。その点移動ドは常に主音を意識しているからアナリーゼには最適である。しかし、教会旋法、つまりモードには移動ドはとても苦労するようだ。バルトークの弦チェレの4楽章の冒頭のメロディ、これは単純なAのリディア旋法(ハ長調で読むとファがシャープになる)で、ある移動ドの人は主音をファと読む。ところがたかしまさんは主音はドだからドで始まりファをシャープにするという。これは実はバークレー式移動ドなんだけど、私は固定ドだからラから始める。この場合三つの読み方が存在することになる。ああ、ややこし。