かぶいて候のマスター死去。

西麻布の焼き鳥屋「かぶいて候」の超ユニークなマスターが昨日亡くなったという。
77歳。もう10年ほど癌との闘病で、合間を見ては店の椅子に座って睨みを利かせていた。娘の明美さんがすらっとした美女でこのアンバランスなコンビが面白かった。
マスターはなにしおう頑固一徹で「お前なんか客じゃない、とっとと帰ってくれ」などといって客とよく喧嘩していた。
彼の生涯は半端じゃない。若いときはなんとヤクザの社交場の頂点、赤坂のラテンクォーターの支配人で、ヤクザの頂点の人たちをよく知っている。力道山が殺される前にやめ、それから実業で大いに活躍し、チェーン展開もして府中で大きな結婚式場等の事業に邁進。そこでバブル崩壊に直面し、莫大な負債を負った後の店名が「かぶいて候」なのだ。
彼はいろんな人と喧嘩しているが、一番おもしろいのは、三枝成彰。殆ど私の同級生なんだけど、ある日彼が自分で運転して「かぶいて候」の前で車を停めて入ってきたのでマスターが「なんという停め方をするんだ、営業妨害だからすぐに車を動かしてくれ」というと三枝氏「オレ三枝なんだけど知ってるよね」という大馬鹿な発言。マスターいわく「知ってる、知らないの問題じゃないだろう、帰ってくれ」 と言って追っ払ったそうだ。パチパチパチ。

今日は店、どうなってるんだろうと思って行ってみると、何事も無かったように18時から開店している。お父さんの遺言のような、誰が死のうと客は6時に来るんだ。何事も無かったように店を開けねばいけない、だと。
合掌。