神谷バー

事務所にいると、CDばかり聴いて仕事にならないので、午後、浅草の神谷バーへ行く。西麻布からバスで虎ノ門ヘ出て、地下鉄で一本。結構早く着く。昼間から飲んだくれの不良老人の一員となってベルリオーズの「音楽のグロテスク」読み終える。当時の知識人の常識であったろう文学からの引用がやたら多く、猛烈に毒づいているがピンと来ないことが多いのは仕方がないとしても、饒舌すぎて読みにくいこと甚だしい。中に一つ面白い話があった。あるオーケストラでベルリオーズの曲をやることになったとき、そこの座付きの指揮者が物凄い才能でいろんな楽器をひきまくる。ベルリオーズの曲にはハープがあるが、そのオケにはハーピストがいない。その指揮者はハープを借りてきてベルリオーズと打ち合わせ。「シ」と「ド」しかないことを確認した指揮者は自分がやると言いだした。ハープなんか弾けないことを知っている楽員たちは驚いたが、指揮者さんは慌てず騒がず「シ」と「ド」の隣の弦を外してうまくさばいたということだ。